料理は科学か、アート(直感)か  

料理は科学か、アート(直感)か

とんでもない料理本が米国で発売され、購入しちまいました。
ネイサン・ページ・ミアボルドの『モダニストの料理』です。

ネイサン・ミアボルドはマイクロソフトで副社長にまでになった天才的な科学者。(技術部門の最高責任者 CTOだった)

勿論おいらにそんな畑違いの方に関する知識はなく、マルちゃんからの情報です。

「こんな面白い人が、こんな凄い本を出したよ」というメールをくれました。

『モダニスト・キュイジーヌ  料理のアートと科学』は全6冊2438ページの大冊。定価は650ドルでアクリルケース付きの豪華版。

これを高価だと感じるか。逆ですね。
もし日本で同様な本が出れば10万円を下る事はあり得ない。

下手すれば数十万円でしょう。
しかもその内容に革新的なものは無く、だいたいにおいて料理自慢のオンパレードであり、料理カメラマンの腕自慢に終始するのみ。写真集とかわりがないって事です。

「モダニストの料理」、米国アマゾンなら400ドル半ばで買え、これは5万円もしない、今の為替なら4万円以下で買える。安いと考えるべきでしょう。 ※米amazonのみ



マルちゃんからネイサン・ミアボルドの略歴と本の概要を教えてもらい、即座に購入を依頼しておきました。彼女も買うそうなので、ついでにおいらの分も頼んだのです。考えのは約1時間だけ。

ミアボルドはまれにみる科学者でありながら、料理人でもあり、正統なフランス料理をマスターしています。この料理書はビジネスの傍ら、あらゆる近代的な調理設備を備えた研究室で料理人を交えて3年半も「実験」を重ねた研究書であり、これも普通はありえない事。リッチマンであるこの人だから出来たと言える。

発売は米国時間の3月7日。
いずれ日本語の翻訳書が出るでしょうが、待てません。
片手に英和辞書を持って苦労する価値はあると判断しました。

電子版の予定はなく残念。
キンドルやiPadの機能はこういう時に役立つはずだが・・・

ネイサン・ミアボルドがどういう人だか、聞いた範囲でざっと紹介しておきましょう。

ネイサン ページ ミアボルド/Nathan P. Myhrvold
1959年8月3日カリフォルニア州サンタモニカ生まれ 51歳
ワシントン州シアトル在

5つの学位

14歳で高校を卒業
19歳でUCLAの数学科学士、地球物理学修士、宇宙物理学修士
(カリフォルニア大学ロサンゼルス校 UCLA)
23歳、数理経済学修士と理論物理学博士号を取得
(プリンストン大学)
Ph.D後にケンブリッジ大学に渡りスティーブ・ホーキンスの研究助手を務める。

ビル・ゲイツのマイクロソフトには13年いてCTOとなる。
ビル・ゲイツの跡を継ぐとさえ言われるようになる。
スティーブ・バルマーがマイクロソフトの社長になった後もミアボルドはゲイツに深く信頼されていた。

※中学生が一流大に入り、大学に入学する年齢にはすでに学位を3つ。とんでもないクソガキですな。神童ぶりが分かります。こうした天才は結構おりますが、30代でマイクロソフトの副社長になる者はいない。

その後マイクロソフトを退き2000年にインテレクチュアル・ベンチャーズを科学者の2人と立ち上げ共同創業者・CEOに。発明資本産業のイノベーション活動に踏み出した。目指すのは『発明の取引市場』の確立。

インテレクチュアル・ベンチャーズは新型の原子炉開発、気候変動の予測に関する研究、そしてハイテクによるマラリアを撲滅する方法などに取り組む発明資本会社。信頼を寄せる友人のビル・ゲイツも研究に多額の投資をしている。
ミアボルドのマラリア蚊を退治する新装置のライブデモ

趣味はカメラや古生物学。共に趣味の範囲を超越している。
料理も好きで「ラ・バレンヌ」で学びフランス料理を身に付ける。
バーベキュー大会で優勝した経験も。

ミアボルドが料理のモダニズムを目指すのは2004年。
真空調理機や極超低温冷凍設備などを備えた料理研究所を作り、料理人のマキシム・ビレット、クリス・ヤング(共にこの本の共著者)を招き、食材の物理的性質や成分処理による変化などの研究を続けた。

これから読み始めるのですが、この本のレシピは普通に料理レシピを求める読者には向かないでしょう。個人では製作不可能な料理が多いからですし、体系的すぎるきらいもあるようです。

しかしその内容の濃さは「信頼するに値する」と思います。
まったく天才というのは何をするか分かりませんな(笑)

下は「料理のアートと科学」、この書専用のウェブサイトへのリンクです。
英文ですがこの本の概要が分かるようになっています。


Modernist Cuisine The Art and Science of Cooking.jpg
Modernist Cuisinenのサイト



Modernist Cuisine: The Art and Science of Cooking ネイサン・ミアボルド



遠い昔ですが、「汁のない吸い物」を作ろうとしました。
どうしてそんな着想をしたのかは憶えておりません。

ここで詳しい話を書くことは出来ませんけども、蓋を取ったら汁はなく種だけがポツンとある。そんな吸い物を作ろうと試行錯誤。

炊いたら柔らかくなり、比較的繊維が丈夫。そんな食材を根菜類(例えば大根や蕪)を中心に色々試してみました。

しかし、箸で簡単に裂けて口当たりが滑らかソフト、だが内部に沸点に近い高温の吸い地を閉じ込め得る食材。一定時間安定が必要。そんなものはなかなか無い。コーティング剤も試したりしました。

植物だけじゃなく、その時代に入手可能なありとあらゆる食材を試しました。珍獣の内蔵や脂、見たことのないウリなど。

洋菓子を習ったのもこれがきっかけです。
砂糖に頼らぬ菓子のテクニックを知りたかったからです。
そこに何かヒントがある気がしたんです。

結局満足の出来るものは無く、椀物でお茶を濁しました。
しかし満足できなかったからと言ってこの経験を無駄とは思いません。
色々な食材を知るうちに「料理は食材」だと気付いたからです。

今になってその吸い物に再チャレンジする気はありませんが、『料理のアートと科学』、この本に中に答がある予感がして仕方ありません。


Googleも料理のレシピ情報検索が行える「レシピ検索」を米国と日本で開始しました。これも科学的思考によるプランの実現だと聞きます。料理と科学の接近が加速し始めている様です。完全自動化までにはまだまだ距離がありますが、いずれ将来はそうなるでしょう。

「直感派」のおいらとしちゃ少し複雑ですが、まぁおいらが生きてる間に劇的な変化が起きる事は無いでしょうね。科学って奴はSFと違って「のろい」もんですよ。さらに、人間様は他のロクデモネェ事に忙しくて、科学の足をひっぱるでしょうしね。


2011年03月08日

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