煮物、焼物、愚か者  

煮物、焼物、愚か者

商売と人生で共通するもの

煮過ぎ沸かし過ぎは禁物。「煮えばな」を味わう。
これは料理の初歩にして奥義でしょうな。

商売にもそのまま当て嵌まると思います。

商売とは人間関係。
そして人間関係は世に生きる者の全てです。

つまり上に書いた事は料理だけじゃない普遍的なもの。

煮過ぎ・沸かし過ぎ
これが良くないのはネットのサイトも同様だと思っています。

しかし年月は自然に積み重なっていくもの。
なので「煮えばな」を維持するのは難しい。
まぁ不可能に近いものがありましょう。

だが諦めずに努力はすべきでしょうな。
中庸を保つにはそれが必要です。

少なくとも「加熱」に自ら乗ってしまうのは慎むべき事。

 

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理由は簡単。「バランス」ですよ。
物事は「あつく」なり過ぎれば必ずバランスが崩壊する。

「ぬるま湯」の温泉には入る気がしない
だが熱すぎれば入りたくても入れない

そういう事です。



焼くものと焼かれるもの

仮にAという板前がいるとします。
頭の回転が早く手先が器用。物覚えが良い。

しかしこのような人間に付き物の欠点がある。

好奇心からより強い熱源に近づくのはいい。
だがいきなりショートカットを作ってしまう。
分かりやすく言うと「近道」をしてしまうんです。

結果的にAは「強火に炙られる」ことになります。


次にBという板前。

このBは叱れてばかりで物覚えが悪い。
不器用で庖丁も上達しない。
腕が良くて華のある兄さんや同僚を遠くから眺めるだけ。

だがこのBには理解されにくいが良い面がある。

「辛抱する力」を持っている事です。
投げ出さず諦めない。

出来の良い周囲の板前から馬鹿にされつつ、
「とんま」「くず」と冷水を浴びせらても堪える力がある。

Bは「強火の遠火で炙られている」状態です。


三人目の板前はC。

ごく普通の人間です。
特に物覚えも悪くなく、人付き合いも普通。
仕事も修行年数に見合った分だけソツなくこなす。

だがのめり込む程の熱意はなく、冒険心も持っていない。
失敗をせず適度に人生を渡って行ければ満足。

まぁ現在一番多いのがCのような人間でしょう。

Cは熱い熱源から遠い場所におります。
なので「遠火、または弱火で炙られている」と言えましょう。



「焼く」とは何か
それはね、「対象を鍛えること」です。

冷たく美しい輝きを放つ絶品の「日本刀」
なぜこれほど妖しい輝きを放つにいたるのか。

それは「焼きを入れる」からです。

だがそれだけではありません。

もうひとつ欠かせない事があり、これがあってこそ。
「水で冷ます」工程です。

この二つのメリハリを経てしっかりした刃物になる。


では料理の焼物はどうか。
一番難しい、というか不可能。だが理想は、
アイスクリームを焼くこと

アイスは氷。
氷は水。水だが旨味を含んだ水。

しかし水分は焼けません。
もし可能ならこれが究極の焼き物でしょう。

これにより近いほど美味しい焼物を作れる。

例えばフグの白子を焼いたもの。
白子は外部の薄皮だけで内部は固形を保っていません。

こうした難しい焼物をうまく仕上げるにはどうしたらいいんでしょう。

破綻を恐れ火を弱くし、遠ざけるべきか。
そうすると確かに失敗はしないでしょう。

しかしそれは燻製に近いものでしかない。
Cはこのような焼物しか出来ず、自らもそんな人生を歩む。

冒険して思い切り熱源に近づけてはどうか。
そのうえ強火だと早く仕上がる。
Aの発想ですな。

仮に「成功」したとしても内部は冷たい。つまり「中身が無い」
だいたいは外側だけ焦がして失敗するのがオチです。

せっかち過ぎるとね、
いつしか多くの「見返り」を求めるようになり、その結果いつまでたっても現状に満足出来ない不満を持つ。

それが人生の最後まで続く事になります。

Aのようなタイプの多くは才能を自ら摘んでしまうのです。
器用貧乏のまま人生を無駄にする。


見事に鍛え上げるにはどうすればいいのか。
その答えを出してくれるのはBです。

遠すぎず、近づき過ぎず
熱すぎず、冷めたくもなく

その中庸を経験で身につけてモノにしてるのはBのみ。

辛抱できずに諦めていれば冷水の中に入るだけです。
それではAと変らぬ人生が待っているだけ。

遠くからでも火の熱さを目指して諦めぬ姿勢。

外部はしっかりと焼き固まり、内部には滋味の詰まった水分をたっぷり含んでいる。

Bはいつか必ずそのような焼物を焼けるようになります。

そして自らの人生もそれと同じ様なものとなる。




大寒も過ぎました。
春を待つと致しましょうや。

2011年01月21日


ただし、類型化するのは無意味でもある


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