郷愁の食と味覚  

郷愁の食と味覚

ほぼ二週間ほっつき歩いて参りましたがどうにか無事に戻りました。航程は辛くなるがアジアの某国でもこの際に用事を済ませ、アジア系航空会社を使い沖縄那覇国際空港に帰国。

那覇や中部の古馴染回って情報収集しながら泡盛。
なにやら騒々しい雰囲気の名護の街にも足をのばしました。

屋外でヒージャー鍋囲んで夜を明かし、ほとんど寝ずに空港へ。
上空から見ると「主張」も「秩序」もないガラクタの寄せ集めにしか見えないうすら寒い街、東京に到着。

カナダの北限からチリ、アルゼンチンの南限てな具合に移動距離がメチャクチャだったんで流石に疲れが残っております。なにしろ地面にいる時間より移動してる時間の方が遥かに多い。しかしまあ「極寒」というのは、「寒い」ものではなく、「痛い」もんだって事を思い知らされた旅でした。



チリとカナダの賢明さ

今回もいつも通り主たる興味は「食」と「自然」と「人間」にあったのですが、意外なところで啓発を受けました。それは「教育」です。

日本では「ゆとり教育」って奴のありがたい成果なのか、子供の学力が世界の中でがた落ち。大学に合格しても日本語を話せないヤツまでいたりする。

教育で一番重要な鍵を握る「教師」は、「変態行為」でしょっちゅうニュース沙汰。政府はソフトではなく「ハコ」と政官界余剰人員の手当てに教育目的の税金を流す伝統をやめない。

ですが一番肝心なのは「早期教育」ですな。
つまり幼児のうちにしっかりとした「人間の基本」を植えつける事。基本があってこそ先々本当の学力が身につくのです。

この効果はすでに科学的に証明されてるみたいですよ。その子が将来世の中に還元する利益まで金額に換算できる。正しい教育を受けた子達は莫大な利益を社会にもたらすのです。

ところがどこの自治体でも幼児向け施設が慢性的に不足。国民の血税の使い方がわからない抜け作ばかり。ママ達は安心できないのが今の日本ってわけでしょう。

就学年齢になると「落ちこぼれ」がでますが、これに対してもなんら有効な手を打てず「負け組」などとひとくくりにして見捨てる傾向もある。

最先端の技術を教える学校にはそれなりの投資が必要だと思いますけども、権威主義になってしまってる教育機関などにつぎ込む金は無駄。

その金は「底上げ」に使うべきでしょうな。石を投げれば大学生に当たる様な社会でね、高等教育にばかり力を入れる必要性は薄い。それよりも「落ちこぼれ」を掬い上げる方がメリットが大きいんですよ。

識字率の高さ、これが戦後の日本をここまで大きくしたんです。つまり「平準化」した社会です。「格差社会」などでは断じてない。

平均的に教育レベルがそれなりだったからこそ、社会は安定し、世界でも稀に見るほど「安全」な国だったのです。

「できない奴」を「できる奴」にする波及効果は計り知れなません。
金額に換算すれば日本がバブル崩壊や金融危機で失った損失を超えるかもしれない。
それくらい国家にメリットをもたらすのです。
(実際は教育レベルが高止まりしてる日本ではそれほど劇的な効果はないかもしれませんが)


偶然ではありますが、カナダとチリはその教育方針が世界でも群を抜いて素晴らしい国家だったのです。

カナダには90年代に多くの移民が流入しました。だいたいの移民家庭は低収入で、さらに言語も違う。その子供達は自動的にドロップアウトする割合が増えます。

そこでカナダ政府が考えたのは、「将来の経済効果」「国家の安定」のために、全力を挙げてこの子供達の教育レベルを引き上げるという事。それは見事に成功し、今ではカナダの子供達の学力は世界でもトップクラスです。

一方のチリは、つい先日大統領選挙があり、残念ながら任期満了を迎える女性大統領ミシェル・バチェレの強力なリーダシップで爆発的に幼稚園の数を増やしてきました。

すべての幼児に医療と教育を無償で提供する事こそチリの未来にとって必要不可欠の投資だという、確固たる理念による政策です。

バチェレは女性ながら国防大臣も努めたほどの軍事通ですが、本来は小児科医で、WHOで活躍したり保健大臣にもなった福祉の人。その一方でピノチェトの国葬を許さなかった女丈夫。つまり心優しき女傑って感じでしょうかね。 (過去に軍事政権によって酷い目にあった個人的な事情もある)

バチェレ政権の間に子供の出生率が向上したって事実をね、少子化で沈没しかかってる日本って国は大いに学ぶべきでしょう。

今度の大統領選挙でどうやら少し右寄りの政権が誕生する様ですが、この素晴らしい政策は続けるべきでしょうな。

韓国の教育政策も評判が高く世界レベルですが、昔の日本の良い部分をうまく取り込んでおりますな。

ところが肝心の日本の有様ときたら・・・

鴨南蛮そば

餓え焦がれる愛しいものはやっぱり「日本食」

荷物は自宅に送ってありますので、ほとんど手ぶら。
なので先に店に寄りました。

ヒゲも剃らず、顔面雪焼けの怪しい男を、板前達は怖がる事なく親方だと気付いてくれました。さすらいのバックパッカーと間違えられると思ったんですが(笑)

「親っさん、あんまり無茶しないで下さいよ、もう」

ゴツイ体つきに似合わず優しい言葉(?)をかけてくれましたけども、

「爺扱いはまだ早いよこのやろう。旅なら月までだって行ってみせますよおいらは。ところで蕎麦を密輸入してきた。おまえちょっと打ってくれよ。蕎麦が恋しくてたまんねぇが、おいらクタクタでさあ」

丸太ン棒のような腕と、ドラエモンみたいな掌したその板に打ってもらう事にしました。なにしろそんな棒っきれみたいな手じゃメン棒も要りませんしね(?笑)

で、そいつに打たせながら待ってたんですが、待ちきれない。

「おい、まだかよ。いつまでやってやがんでぃ!」

「あのね、親っさん。さっき着いたばかりですよまだ。カップ麺じゃないんですよこれ。ちょっと落ち着いて下さいよ。粉に挽いて畳んで切って茹でるんです。一生懸命やってますから」

「・・・・・・そうだったっけ。スンマセン・・」

ちょいと反省顔しつつ、小さい声で、
「寒いんで、鴨南せいろにしてね」

ドラエモンの野郎は何故か悲しそうな顔で、
「はいはい、美味しいの作ります」

ちなみに「鴨南蛮せいろ」とは「鴨せいろ」にネギが入ったもの。
日本橋馬喰町が発祥の「鴨南蛮」は下のように温かい蕎麦。

しかしやはり蕎麦は「盛り(海苔無)」か「ざる(海苔付)」
でも「鴨せいろ」はつゆが温かい。
酒はヒヤ、蕎麦も冷たい、しかしツユは温い。
これが好いのですよ、おいらは。

鴨南のツユは、特にせいろのツユは難しいもんです。
鴨のエキスが出てなきゃいけないが、濃厚すぎれば蕎麦が死ぬ。
それに鴨肉を柔らかく仕上げなきゃね。

どこかのアホ板前が書いてるらしい、「てまえ、なんとか」って馬鹿ブログをPCで見て「やかましい親父だなコイツ。どこのトンチキだよ魚山人ってのは。」などと思いつつ待っておりますと、

「出来ましたよ」

「おう、待ちかねたよってぇ~の!!

じゃ、あ、あ、あ、ああれヲ・・・」

「どもる事ぁないでしょう(笑) はい、一番いい酒も用意してます」

「ん~」

「ん~」

「ん~」

「(;O;)」

「どうしたんすか?いったい(笑)」

うめぇ~なぁ。こりゃうまいよ、おめぇ。

ちきしょう、このやろう。

そいじゃドラエモン蕎麦もいただきます。

うん。いいツユ。

「おまえさんは蕎麦職人なのかって話だなこりゃ♪」←ぃぃ調子

鮨も握れば蕎麦も打つ、いい板だねぇ(T_T)
コイツの親方に逢ってみたい(←バカ (^_^;)

ちゃんと鼻に抜けて香も生きてる。

こりゃもう幸せの一言でございます。


海外にも蕎麦や鮨はあります。
日本となんら変わらぬレベルのところもある。
味自体は同じ。努力してその様に作ってますのでね。

それでは国内で食う和の食はなぜこれほど旨く感じるのか。
それは〔食は味覚のみにあらず〕って事なんだと思います。

2010年01月24日

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