美味しい牛乳  

美味しい牛乳

いまだに牛乳を「完全食品」だと思っている人がいるのは驚きです。
栄養構成は貝やレバーや卵にも及びません。鉄分やマグネシウムその他微量栄養素が欠ける牛乳は完全食品から遠い食品です。

ひところ話題になった環境ホルモン(内分泌攪乱物質)の問題成分エストロゲン(女性ホルモン)が多いのも気になるところ。
※環境ホルモンとはダイオキシンやDDT、PCBなどの事。これらが動物の体内に取り込まれると女性ホルモンの一種エストロゲンと同様の作用をする。

 

スポンサーリンク

牛乳や乳製品が日本で普及したのは戦後ですが、その歴史は意外に古く、孝徳天皇へ百済が献上した記録があり、搾乳を飲んだらしい。その後「蘇」「酪」「醍醐」などの乳製品が作られ主に薬として使われていました。蘇は現在でも奈良の飛鳥で作られています。そして和食では牛乳の事を「飛鳥」と呼ぶ場合もあり(飛鳥鍋など)、名残りが今もあります。

おいらは時々スーパーで食材チェックをしに行きますが、その際必ず立ち寄るコーナーが幾つかございます。そのひとつが牛乳の棚。

近年相次いで「食の安全」を疑わせるに充分な事件を引き起こした日本の大手乳業メーカー。さすがに少しは反省しているのかなと思い、コーナーを覘くとあいも変わらずUHT牛乳ばかり。パス乳は地方の小さな会社製造のやつが隅っこの方にちょっとだけ。

1955年に砒素ミルク事件で百名以上の死者を出した森永も、その企業姿勢はまったく変わりなし。あとふたつの大手乳業も入れた「乳業御三家」揃ってまったく何の変化もなし。

もともと牛乳屋というよりミルクを砂糖で煮詰めた練乳のメーカー(菓子屋)だから仕方がないんでしょうが、その巨大なシェアによって日本中の牛乳消費者に選択肢を与えていないのはやはり問題でしょうね。 (さすがに雪印マークは消えた)


何が問題なのかを浮き彫りにするエピソードがあるので紹介しておきましょう。業界ではかなり有名なお話です。

1989年に赤坂の迎賓館で政府主催のパーティがありました。料理担当はプリンスホテルでして、プリンスの料理スタッフはこの時大手乳業メーカーの牛乳を全料理から完全にシャットアウトしました。

実はこの少し前、プリンスの料理スタッフは群馬の東毛酪農を見学しており、その時に東毛酪農のスタッフから初めて「日本の牛乳は世界では通用しない」事を教えられ、「低温殺菌牛乳」の存在を知ります。プリンスのコック達は「なんでデタラメな牛乳知識を教えたのか」、シェフにそう詰め寄ったそうです。

海外の多くの人間は日本の牛乳を腐っていると感じるそうで、これは加熱殺菌方法の違いによるものです。(当然ながら【納豆】も腐っていると思われてますが、引き合いに出すのは間違い。それとこれとはまったく意味が違う話だからです)

ともあれ昭和天皇の大葬で来日した世界のVIP向けパーティの料理には、無名だった群馬県新田町の東毛酪農の低温殺菌牛乳を使い、おかげで世界中のVIPに眉をひそめられるのを免れたっていう話です。これ以降料理人達の間でさらに大企業の食材への疑問が広がって行くきっかけにもなったのです。

これは要するに大手三社のは「牛乳もどき」ではあっても牛乳じゃないって意味になりましょうね。

いまでも海外の主流はパスチャライズド牛乳(略してパス乳)だからです。ルイ・パスツールのパスチャライゼーション(加熱殺菌方法)といった意味ですが、次の二通りの方法です。

LTLT法〈63度から68度で30分間加熱殺菌〉
HTST法〈72度から78度で15秒間程度殺菌〉

一方日本の大手が固執する殺菌方法は高温殺菌。
UHT法〈120度から135度で1秒間から3秒間殺菌〉

固執する大きな理由は【コスト】でしょうね。
パス乳は面倒で手間がかかりますので。

牛乳の大きなメリットは抜群のカルシウム源であるということ。
牛乳の沸点は水とほぼ同じ、したがって120度に加熱するには250の高気圧をかける必要があります。

パス乳を飲みなれた外国人が違和感を感じるのは加熱によるたんぱく質の「焦げた臭い」です。ここまでやれば乳本来の成分が無事な訳がありませんな。カルシウムだって吸収が悪くなります。だから【カルシウム強化牛乳】なんて、消費者をなめているとしか思えない商品すら出回る。(それを「健康の為」と思い、買う方がいるのは悲しい話ですが)

そのうえ高圧をかけて攪拌し乳脂球を粉砕し、それを「おなかに優しい牛乳」と称する【ホモ乳】(ホモジナイズ牛乳)。これもおなかに優しいか眉唾。(おそらくは逆効果)

脂肪を抜き取っていた事を逆告白してる「成分無調整牛乳」を「自然そう」と勘違いさせる表示。

そして「乳等省令」を出した厚労省と大手乳業の「関係深さ」。

(癒着体質があるから役所は縄張りに汲々とするばかりで、消費者側に立つ事が出来ないのです。こうした体質がある限り消費者庁を新設しても出来る事はなにも無いと思います)

乳等省令にある「脂肪分3.0%以上」という成分規格が「3・5牛乳」やら「3・8牛乳」などの表示を煽る結果になっていますが、反面たんぱく質の表示義務はありません。これは妙な話でしてね、牛乳で大事なのは脂肪分の多さではなくたんぱく質と脂肪のバランスが肝心なんです。

パス乳では処理しにくい乳房炎の乳牛を抱える苦しい経営の酪農家とUHT牛乳ばかり飲まされ続ける消費者。国内の酪農家が減れば脱脂粉乳を輸入して「のばした牛乳」を作ればすむ大手乳業は困りはしません。

「いちじがばんじ」たぁこの事ですわ。

べつにクリームや脱脂粉乳やバターを加えたりした成分調整ミルクが駄目だって言ってる訳ではありません。乳飲料も有りでしょう。

しかし牛乳は牛乳として売るべきでしょう。
「生乳を加熱殺菌しただけのもので添加や調整はいっさい無し」ってのが牛乳の定義のはずです。なのに牛乳の棚に平気で加工乳を置いている。それじゃ消費者は牛乳だと思って買いますよ。紛らわしい販売をするのは止めてもらいたい。

牛乳の棚には牛乳だけを陳列すべきです。
小売店は意識を高めるべき。実際に品物を並べるのは出入り業者ですが、陳列を許す小売店の責任ですんでねこれは。

味気の無いUHT牛乳や加工乳ばかりがずらりと並ぶスーパーの棚。
250気圧で120度って温度は殺菌の範疇を超えてます。乳本来の成分が無事なわけがない。

あのね、十円や二十円高くついても「ノンホモパス乳」を飲みましょうよ。まともな牛乳が置いてないわけではありませんので。

クリームライン

ホモジナイズ牛乳が無い時代、牛乳ビンには白い輪っかが出来るのが普通でした。憶えておられる方も多いでしょう。

あの輪を「クリームライン」と言います。静止させると比重で脂肪が浮き、クリームの層が表面に出来るんですが、そのクリーム層との境界線になります。

ところが今のUHT牛乳はホモをかけて脂肪球を粉砕してるからコップに入れても白いラインが残りません。

クリームの層が出来たり、浮いたり、グラスが白く濁ったりは気持ちが悪いかも知れませんがね、それが美味しいミルクの証明なんですよ。

鰹節にある表面の白いカビ。昆布の白い粉も旨味の証明。
こうしたものを気持ち悪がって嫌がる人が増えるから姑息な企業は「加工の度合い」を深くしてついでに合理化をはかり、余計な成分を増やし本味を消滅させるのです。

食害と環境汚染の世で生きる

添加物食品を完全に否定するのはもう不可能だし、高濃度でメチル水銀を体内濃縮してる「天然の大型魚」と、添加物オンパレードの魚肉ソーセージのどちらが安全か。その答えを正確には誰も言えません。

もしかしたら添加物よりも天然素材の方が有毒かも知れない。その可能性だって否定はできない。どちらにしても過剰反応ともいえる添加物&中国アレルギーは少々異様でもあります。

原生林の山深くに行って完全に自給自足はできない相談です。
(できたとしても汚染を回避できるか疑問)

つまり我々は逃げる事はできないのです。
まずそこを直視しましょう。
冷静さを失えば「偽物の自然食品」が世に蔓延する結果になります。

ではどうすれば良いのか。
我々がとるべき道はひとつだけです。

【見る目を養い、悪い物は買わない】

企業というのは野放図でもありますが、実際は消費者が存在して初めて成り立ちうるものでして、その本質は極めて脆弱なものなのです。
買うお客がいなくなればどんな巨大にみえる企業でも即座に崩壊してしまいます。つまり本当は消費者の方が力が勝るのですよ。

そこに気付くべきでしょう。

それを知っているから企業や団体は実際には単純な事柄を消費者に知られたくない一心でわざと複雑にしてみたり情報の公開を阻んだりするのです。

つまり消費者に知恵を付けて欲しくないのが本音なんです。

ところがもうそんな時代ではありません。知るべきなのです。情報を公開させる。隠し事はさせない。そう声を挙げていかなければなりません。

【商品情報を正確に公開しない企業の商品は買わない】です。

大切なのは間違った情報に振り回されない事。日本のマスコミ、特にテレビはいまだに30年前のレベルから脱することができず進化がまったく見られませんので距離をおくべきでしょう。誤った概念を植えられる可能性大だからです。

本質を知る努力を怠らない。
それは容易いことではなく、料理を仕事にしてるおいら自身も難しくて途方にくれる事が少なくありません。しかし投げ出す訳にはいかない。続けるしかない。

そういう日本人が増える必要があるのです。そうすれば食を供給する良質な企業を多数育てる結果になります。それが21世紀を生きる我々と、将来の日本人の安全を確保する道なのです。


2009年05月25日

Comment
スポンサーリンク








Copyright © 2017 手前板前. All Rights Reserved.